2011年4月7日木曜日

HOPE JAPAN


日本に希望を届けようと行われた慈善公演HOPE JAPANを
見るため、シャンゼリゼ劇場へ行く。

今回のこのチャリティイベント、参加する出演者がとにかく
ものすごい。
現代バレエの女王Sylvie Guillem、オペラ座のエトワール
Nicolas Le Riche、オペラ界からはソプラノのNatalie Dessay
世界的なピアニストMartha Argerichなどなど...錚々たる顔ぶれ。
短い時間でよくこれほど豪華な出演者を集められたものだと
誰もが驚く夢のような競演だ。
しかも会場は由緒正しきシャンゼリゼ劇場である。
当然、140ユーロのチケットは即完売。
本来この日は小澤征爾が「フィガロの結婚」を指揮する予定に
なっていたらしく、それがキャンセルになったので、急遽
この慈善公演に当てられることになったという。
なんという巡り合わせだろう。
「あいにくのキャンセルがこのような素晴らしい公演に変わる
ことになってうれしい」と小澤征爾自身もパンフレットに自筆の
メッセージを寄せている。

小澤征爾氏のメッセージ

イラストデザインは高田賢三氏

開演20時。
はじめに高田賢三氏があいさつを。
祖国の突然の震災に哀しみ憂う心のうち、日本のために集まって
くれたアーティストや観客への感謝の思いを、ひとつひとつ言葉を
選びながらけっして流暢でもなく、時折こみ上げてくる思いに
詰まりながら...。
人前で話しをするのは、おそらく賢三さんが一番苦手なことのはず。
日頃の賢三さんをよく知っているだけに、これこそが精一杯の
できることなのだと思うと、じんと胸が熱くなる。
割れんばかりの拍手に照れながら、ペコリと頭を下げて舞台を去る。
さあ、いよいよ舞台のはじまりだ。

オープニングはもちろんSylvie Guillem。
スポットライトにうかぶ彼女の強靭でしなやかな肉体に、のっけから
言葉を失う。息をつく間もない.....圧倒的な存在感。
続いてイギリス人の女優Natasha Parryと日本人男優の俳句の朗読。
Natasha Parryはなんと演劇界の重鎮Peter brookの奥さまだという。
大変な親日家だそうで、今回は自らの俳句を披露した。

世界的なソプラノ歌手Natalie DessayとテノールのRolande Wilsonが
「ホフマン物語」のアントーニアを歌い終わり、俳優のLambert
Wilsonが静かに登場。
被災地 仙台から送られて来たという一通の手紙を朗読しはじめると、
会場は水を打ったように静まり返る。
そして宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」を読みはじめた頃には、もう
だめ。プチッと堰を切ったようにどうしょうもなく涙がポロポロ。
「......慾はなく、決して怒らず、いつも静かに笑ってる....」
まるで仏さまのような精神.....全然正反対の私でも、いまはこれ
こそニッポン人の原点なんだと、誇らしく叫びたい気持ちになる。
パリに来て以来、いや生まれて今日まで、これほど日本のことを
考えたことがあっただろうか? 
家族、友だち、生まれ育った茅ヶ崎....。
ニッポン人に生まれて良かった。
ニッポン....心にあるのはずっと日本のこと。

フランクフルトに住むダンサーの島地くんも同じような気持ち
だったらしい。だからこの慈善公演の出演が決まった時の喜びは
ハンパじゃなかった。
「日本のためにいま僕ができることは、踊ることだけだから」と
所属するフォーサイスカンパニーの公演の合間をぬって、
フランクフルトから飛んできた。
島地保武くんはストリートダンサーから単身ドイツに渡り、
現代バレエの巨匠フォーサイスに認められ入団したという、異例の
有望株だ。知り合って以来、ここ7年ほどパリ公演のたびに舞台を
見せてもらっているけれど、目覚ましい成長ぶり。
今回は大御所ダンサーの中で、かなり緊張気味だったけれど、
ニッポン人の強い精神性を厳かに見事にソロの舞台で踊りきった。
ブラボ〜!

島地くんの後は日本人声楽家、そしてオペラ座のエトワール
Nicolas Le Riche、舞踏家Akram Khanと完成された超人的な
ダンスが続き、いよいよ世界的ピアニスト Martha Argerichが
登場。Nelson Freireとデュオでシューベルトを弾く。
久びさに見るアルゲリッチ、すっかり白髪になってしまって
びっくりだけれど、躍動感のある力強い演奏は昔と変わらず
素晴らしかった。

そして大トリを飾ったのがジンガロのBartabas。
もちろん愛馬Soutineを引き連れての登場。
予想通り.....神秘的で威厳のある存在感は健在だ。

満場総立ちの大喝采!!

参加アーティストは総勢21名。
写真撮影ができなかったので紹介できないのが残念だけれど、
それぞれが世界トップクラスのアーティストたちだ。
会場を埋め尽くした約2000人の観客は総立ちで大喝采。
日本を思う人たちの思いに感動で胸がいっぱい、夢のような
一夜であった。

公演の入場料15万ユーロは義援金として日本の被災地に
送られるという。

またこの模様はテレビ放映もされるそうで、フランスでは
FRANCE2 le mardi 12 avril /00h30
日本ではNHKで近いうちに放映されるそうです。
ぜひぜひ、お見逃しなく!!


会場前で演劇界の神?! ピータ ブルックを発見!

ダンサーの島地くんと奥さまのはなちゃん
はなちゃんも新国立劇場の名誉ダンサーなのだ!

1 件のコメント:

  1. はじめまして。HOPE JAPANの記事を拝見にこのページにお邪魔しました。
    4月7日はたまたまパリにおりましたがチケットが手に入らず残念に思っておりましたが一昨日NHKの放映で観ることができ感動いたしました。
    「生まれ育った茅ヶ崎・・・」とお書きになっていたのでこのコメントを書かせていただくことにしました。プログラム中の山田耕筰の「赤とんぼ」も作曲家が茅ヶ崎にいた時の作品でした。私は茅ヶ崎市美術館長小川稔と申します。今年9月茅ヶ崎市美術館では「川上音二郎・貞奴展」を開催いたします。その準備と調査のために先月パリにおりました。
    川上夫妻は1900年パリ万博で活躍し帰国後、現在茅ヶ崎市美術館が建っている場所に住みました。いろいろな御縁を感じコメントさせていただきました。

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